痺症(ひしょう)と按摩療法(あんまりょうほう)Ⅱ

◆痺症は実証か

               片倉武雄

 按摩は切経をおもな診察手段とする。痺症は実証であるとされている。

一般に治療方法は、実証には強い刺激の瀉法をあたえ、虚証にはそれに比べて弱い刺激補法をあたえる。

しかし、実証は拒按である。

この論法にしたがうと、触れてみて痛がれば実証であり、実証であれば痛がるのをむりやり押さえ付けて、強く圧しこむことになる。

これでは患者は2度と来なくなり、治療が成り立たない。痺症と実証と拒按、この関係はいったいどうなっているのであろうか。

関連文献をあったみることにする。

   

『医林改錯・痺症有瘀血説』「凡肩痛、臂痛、腰痛、腿痛、或周身疼痛、総名痺症」

「凡そ肩痛、臂痛、腰痛、腿痛、或いは周身疼痛、総じて痺症と名づく。」

痺症とは分かりやすくいえば、治りづらい運動器疾患ということになる。

たとえば、各関節症 神経痛 筋肉痛 腱鞘炎 鞭打ち症 捻挫 骨折・捻挫の後遺症 肩凝り 腰痛などであろう。

『素問・痺論』「風寒湿三気雑至、合而為痺也」

「風寒湿の三気雑り至りて、合して痺となるなり。」

 その原因は、風寒湿の外邪が経絡に留まり、その配合比により行痺・痛痺・着痺となる。後に熱邪が加わり、熱痺と呼ばれるようになる。

自然現象の六気は、人間の生活にとって必要なものであるが、その程度を越すと害を及ぼすところとなる。

風寒湿熱の邪は、人体の表面にとりつくと、普通は伝搬して傷寒・温病になるが、何らかの理由により経絡に留まり痺症となる。

それでは、何が邪を留めさせるのか。

『済生方・五痺歴節』「皆因体虚、湊理空疏、受風寒湿気而成痺也」 

「皆体虚し、湊理空疏するに因り、風寒湿気を受けて痺と成るなり。」

 痺症とは、風寒湿の邪が経絡上に留まることにより引き起こされる、種々の運動器系疾患を指していう。

それでは外邪を最優先に考えるのかというと、そうでもないようだ。

『済生方・五痺歴節』よると「初めに虚ありき。」である。

特定の部位の過労や打撲、あるいは種々の内部的要因により内虚があると、普段は感じられないような、気候の変化も邪として受け入れやすくなり、虚している経絡に留まる結果となる。

痺症は外邪だけではなく、内部的なものとの組み合わせで起こるものの方が、臨床的には多いのである。

つまり邪実だけではなく、虚実錯雑しているものが多いので、痺症=実証=拒按 という関係が成り立たなくなる。